お知らせ・コラム
金属リサイクルの仕組みとプロセス
金属リサイクルとは
金属リサイクルの定義
金属リサイクルは、廃棄された金属製品を収集し、分類、粉砕、溶解などの一連の処理を経て、新たな製品の原料として再生することを指します。特に鉄、アルミニウム、銅などの金属がリサイクルされますが、これらの金属は品質が劣化しにくいため、何度も再利用することが可能です。
鉄くずの種類
鉄くずは含有する鉄の特性に応じて、主に「銑(せん)くず」と「鋼(はがね)くず」という二つカテゴリーに分類されます。
主な銑くず
- 上銑くず
- 並銑くず
- 可鍛鋳鉄銑くず
主な鋼くず
- 炭素鋼くず
- 低銅炭素鋼くず
- 低りん、低硫、低銅炭素鋼くず
- 合金鋼くず
- 雑用鋼くず
これらの鉄くずは、それぞれが特定の加工要件や最終製品の品質基準に応じて選ばれ、効果的に再利用されます。
金属リサイクルの環境への影響
鉄、アルミニウム、銅などの金属は採掘による環境への影響が大きく、土地の荒廃、水質汚染、生物多様性の損失を引き起こす可能性があります。金属のリサイクルは、環境問題への対応に直結する取り組みです。
環境問題とこれからの課題
地球温暖化と資源枯渇は現代社会が直面する大きな問題です。金属リサイクルは、これらの問題に対する具体的な解決策の一つとして期待されています。金属製品をリサイクルすることで、製造過程でのエネルギー消費が大幅に削減され、それに伴い二酸化炭素の排出量も削減できます。
持続可能な社会を築くためには、資源循環型社会の構築が必要です。公共機関や企業、個人が一丸となってリサイクルを推進することで、資源の有効活用と環境保全が同時に達成できます。
金属リサイクルのメリット
高リサイクル率かつ品質劣化がほとんどない
金属はリサイクル可能な材料の中でも特にリサイクル率が高く、何度も再利用することが可能です。たとえば、アルミニウムや銅は何度リサイクルしてもその性質を損なうことが少なく、建設材料や自動車部品などに再び使用されます。
また使用済みの金属を有効に活用することで、資源の浪費を防ぎ、地球上の限られた資源を保全することにつながります。
国内で原料供給ができる
国内でリサイクルされた金属を原料として使用することで、外国からの輸入依存度を下げ、国内産業の安定と経済的な自立を促進することが可能です。
省エネルギーと温室効果ガスの削減
金属をリサイクルすることにより、新規に金属を製造する際に比べて必要なエネルギーが大幅に削減されます。アルミニウムのリサイクルでは、新たに生産する場合の約5%のエネルギーで済むとされています。
金属リサイクルのプロセス
各処理プロセスの紹介
鉄スクラップは主に建設現場、自動車解体、家庭用品など、さまざまな場所から発生します。これらのスクラップはリサイクル業者によって集められ、適切に分類された後、リサイクル施設へと送られます。
集められた鉄スクラップはまず、大きな金属片から小さな金属片に分割されます。ここでは、シュレッダーやギロチンカッターなどが使用され、溶解のためにサイズを適切に調整します。
次に、磁気分離や重力分離などの方法を用いて、非鉄金属やその他の不純物が除去されます。
電気炉、高炉による製鋼法
金属リサイクルでは、鉄スクラップを再利用する主な方法として、電気炉と高炉が利用されます。
電気炉による製鋼法
- 原料:主に鉄スクラップを使用。
- 方式:アーク式電気炉が一般的。黒鉛の電極を使って鉄スクラップとの間に電気アークを生成し、その熱で鉄を溶解する。
- 精錬プロセス:
1. 酸化精錬:高温で酸素を吹き込み、鉄スクラップを溶解させる。
2. 還元精錬:酸化物を除去し、粉コークスや石灰を加えて還元性のスラグを形成し、脱酸や脱硫を行う。
高炉による製鋼法
- 原料:鉄鉱石とコークス。
- プロセス:
1. 製鉄:高炉で鉄鉱石から銑鉄を生成。
2. 約1200℃の熱風を鉄鉱石とコークスに吹き込み、鉄を抽出。
- 製鋼:銑鉄を転炉で精錬し、不純物を除去して鋼にする。
- 詳細:
銑鉄は転炉で溶けた状態で、生石灰とともに酸素を吹き込み、不純物を除去。
精錬された鋼は連続鋳造設備で鋼片にされ、さらに圧延機で様々な形の鋼材に加工される。
これらの製鋼法は、それぞれ特有の利点がありますが、リサイクルされた鉄を最も効率的に使用するのは電気炉であり、エネルギー消費とCO2排出を大幅に削減し、環境に配慮した製鋼が可能となります。