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環境問題と向き合う|ケミカルリサイクルの特徴

ケミカルリサイクルとは、使用済みのプラスチックなどの廃棄物を化学的に分解し、原料や化学物質に戻してから再利用する方法のことです。

この方法により、品質を落とさずに新しいプラスチック製品に再利用することが可能になります。

【ケミカルリサイクルの代表例】

ケミカルリサイクルの代表的な例を以下に示します。

1.ガス化

廃プラスチックを酸素量を制限した状態で高温で燃焼させ、一酸化炭素と水素からなる合成ガスに分解する。この合成ガスは化学製品の原料として利用できる。

2.油化(熱分解)

廃プラスチックを高温で熱分解し、燃料油や化学原料油に戻す。生成した油は石油精製の原料として再利用できる。

3.原料・モノマー化

廃プラスチックを化学反応によりモノマー(プラスチックの原料となる分子)レベルまで分解し、新しいプラスチック製品の原料として再利用する。ペットボトルからペットボトルを作る「ボトルtoボトル」がこれにあたる。

4.ガス化溶融還元

廃プラスチックを高温でガス化し、さらに金属による還元反応を経て化学原料に変換する。

5.触媒分解

触媒を用いて廃プラスチックを低温で分解し、ガソリンやディーゼル油などの燃料や化学原料に変換する。

このように、ケミカルリサイクルでは化学的手法を用いてプラスチックを分解し、燃料や化学製品の原料として再資源化することができます。

ケミカルリサイクルのメリット

【資源の効率的な利用】

プラスチックを分解して得られるモノマーやオイルは、バージン素材と同等の品質を持ち、新しいプラスチック製品の原材料として再利用できます。これにより、新たに石油資源を採掘する必要が減り、資源の節約に繋がります。

【廃棄物の削減】

ケミカルリサイクルにより、通常は埋め立てられるプラスチック廃棄物を原材料として再利用することができます。これにより、埋め立て地に廃棄されるプラスチックの量が大幅に減少します。

【温暖化ガスの削減】

プラスチック廃棄物を焼却する代わりにケミカルリサイクルで再利用することで、焼却時に発生する二酸化炭素(CO₂)などの温暖化ガスの排出を削減できます。

また、プラスチックを再生素材として利用することで、新たに石油からプラスチックを製造する際に発生する温暖化ガスを減らすことができます。

これらのメリットにより、ケミカルリサイクルはプラスチック廃棄物問題の解決策として期待されています。

ケミカルリサイクルの問題点

ケミカルリサイクルは多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も存在します。

【技術的な課題】

プラスチックを分解するためには高温や高圧が必要な場合が多く、大量のエネルギーを消費します。このため、プロセス全体のエネルギー効率が課題となります。

また、分解後の生成物の純度を高く保つためには、厳密な分離・精製技術が必要です。混入物や不純物の除去が難しく、製品の品質に影響を与える可能性があります。

化学的分解には多段階のプロセスが必要であり、技術的に高度な設備と精密な制御が求められます。これにより、運用コストや技術的なハードルが高くなります。

【インフラ整備と規制】

ケミカルリサイクルには高度な技術と専用の設備が必要であり、それを整備するための初期投資が高額になります。既存のリサイクル施設をケミカルリサイクルに対応させるためには、改修や新設が必要であり、これもまたコストや時間がかかります。

また、ケミカルリサイクルに関する規制や基準が国や地域によって異なる場合があります。これにより、国際的な取引や技術の標準化が難しくなることがあります。

これらの課題を克服するためには、政府と産業界の協力による適切な政策の策定とインフラの整備が不可欠です。また、国際的な基準の統一や技術革新も重要な要素となります。

環境問題に配慮したリサイクル

ケミカルリサイクルは焼却を抑制でき、マテリアルリサイクルより温室効果ガス削減効果が高い方法です。特に化石資源の節約や再生原料の利用で、温室効果ガスの大幅な削減が期待できるため、ケミカルリサイクルを積極的に活用することが求められています。

しかし、技術面やコスト、インフラ整備などの課題もあるため、ケミカルリサイクルプロセスの効率化やシステム改善が行われていくことが必要となるでしょう。

プラスチックの性状に応じてリサイクル方式を使い分け、ケミカルリサイクルの効果を最大限活用することが、環境に配慮したリサイクルには不可欠です。

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